「知識」ではなく「知恵」を学ぶ
田岡 絵理子 准教授 Taoka Eriko
主要担当科目 : Contract
「法学部とは、知識ではなく知恵を学ぶ場である」。これは、私がまだ、皆さんと同じように法学部に入学してまもない頃、当時の民法のゼミ(少人数制のクラス)の先生から言われた言葉です。知識とは、ざっくり言えば、教科書に書いてある情報であり、暗記をすれば、取得できるものです。これに対し、知恵とは、物事を考える時の視点や考える方法を意味し、こちらは暗記では取得できません。経験を積んで修得するものです。法学部では、社会における様々な争いごとや問題を、法律というツールでどのように解決できるかについて、4年間、繰り返し考え続けます。この「考える」という作業を通して、経験として、ある問題に出くわした場合に、それに関わる人が置かれている立場を想像する力がつき、また、関係者の対立する利害を調整する方法を思いつく力も培われます。この「他者への想像力」と「問題解決能力」が、「知恵」です。皆さん、法学部で学んだ後は、将来、いろいろな職業につくはずです。
しかし、どのような職業についたとしても、社会に一歩出れば、様々な争いごとや問題に出くわすでしょう。その時、どんな争いであれ、それに関わる全ての人の多様な利害を的確に想像し、かつ、その利害を調整する解決策を導き出すことができる「知恵」は、必ず力を発揮するはずです。とはいえ、私も、法学部生になったばかりの頃は、知識と知恵の違いがよくわからず、法律の勉強を続けるうちに、次第にこの違いがわかるようになりました。ですので、民法の研究者となった今は、講義を通して、この言葉の意味を、法学部生の皆さんに伝えていきたいと考えています。